books
飯嶋和一はとにかく寡作な作家として私の中では位置づけられていて、同じくやっぱり寡作であるように思える奥泉光と比べても、ずっと寡作である。これだけ寡作だと、果たして小説家を主たる収入源としてやっていけてるのか読者として端で見ていて不安になる…
「はじめて日本語を褒められた日」という題名で文章を書くことができた人間がこれまで存在したとしたら、それはいったい誰であっただろうと想像してみる。それは一六六九年のシャクシャインの戦いの後に日本への帰順を強いられたアイヌの酋長の若い息子だろ…
うんのじゅうざ、とよむ。なんだか、本を集めている人の間ではしられているようだけれども、戦前戦後すぐくらいに冒険小説や探偵小説を書いていた。新青年系と、私の中では勝手に認知されているけれども、実際は違うのかもしれない。で、その人の昭和17年ご…
はずかしながらノヴァーリスとかに、青春の一時期傾倒したりしていないのだった。物理的に薄いけれども中身も割と薄い。著者の自作解説 *1 には「物語が語られるのではなくて、語ることそのものが、物語を創生していく機微を描いたもの」とあり、その通りに…
カスパール、メルヒオール、バルタザール。その一族直系の男子の名前は、東方からベツレヘムに訪れた学者の名前からとられる。名付けられた体はメルヒオール。しかし、体内には二つのゴーストが宿っていた。それが単純に、二重人格とかではないというところ…
苦労しつつ読み終わる。古文の助動詞は、覚えているようでいて忘れている。いけない。というか、この程度でそういう発言が出てくるのも又いけない。『文づかひ』は、あきらかに『舞姫』とセットで読まれるべきで、それはとってもあからさまなので、高校の国…
『舞姫』は、その他の作品とえらい文体の異なるドイツ三部作『舞姫』『うたかたの記』『文づかひ』の中の一作。・・・・。し、知らなかった。この恥ずかしさは、Macintosh がりんごの一種であることを知らなかった恥ずかしさにも通じるかも。ドイツ三部作を…
寝物語にとても良い。冗長で、いろいろと他愛のない事件が起こるにせよ、世界が平和である。ので、いつでもどこでもすぐやめられて、しかも、眠りを誘う。かなしいことに漢文に対する造詣の深くない私にとって、注釈はかかせない。ちくま文庫版の注釈はしか…
お金持ちに買われてきた天才料理人と、その家の主婦とのSMな関係が話題のお料理漫画。主婦であるところの枕夫人は、おいしい料理を食べることが何よりも楽しみで、新しくやってきた料理人に無理難題をふっかけては、料理人の様を楽しむ。いびればいびるほど…
学生紛争を、決して懐かしさをこめて語らず、かといっておちゃらけてみせるわけでもなく、重さも軽さもかねそなえた過去として描きつつ、現在を抑制のきいたまなざしで遠くから眺めてみせる。『あ・じゃ・ぱん』のように、けむにまきつつわらかすのでなく、…
唐沢俊一がベタほめしていたのでかってみたのだった。たしかによい。でも原作の方がよかったと思うのは、唐沢も指摘しているけれども、それぞれの術の説明が省略されてしまっているところで、あの、山田風太郎の無理そうに思える説明でも、やっぱりあった方…
話の内容に反して書き方がずいぶん落ち着いてるのは、作者の歳のせいなのか。『ムジカ・マキーナ』とこれを比べる人が多いけれども、圧倒的に『オルガニスト』の方がすまーと。そして、『ムジカ・マキーナ』が読みにくい、という人も割といて、それはたぶん…
キャラクターとか、なにものかに迎合してるんだろーか。と、思ってしまうんだけれども、してないんだとすれば、こゆ、べったべたな、たとえば「無垢でかみがかった幼女」みたいなのがなんで出してくるのかよーわからん。単純に?ふくむところなく?すきなの…
短編集『残像』 ISBN:4150103798 のなかの『空襲』を引き延ばして書かれた作品で、同名の映画が作られている。そちらは脚本がヴァーリイ。『スチール・ビーチ』 ISBN:4150110689 がなんかながーい。と感じてしまったのに対して、こちらはそうは感じない。た…
どうも作中人物がほとんど実在の人物をもしたものであるらしいのだけれども、主要な登場人物の内の一人が現実世界でお亡くなりになってしまったらしく、生とは、死とは、をめぐる比較的ナイーブなお話に終始しているのはそのせいなのかもしれないし、刊行が…
何でかこれをエッセイだと思っていたのだけれども、メタフィクション。もっとも著者はそれを否定しているけれども。しかしながら、メタフィクションではありません。恋愛小説です。というのはやはりおかしい。メタフィクションであり恋愛小説だと思う。物語…