海野十三『赤道南下』ISBN:412204233X

青葉型巡洋艦衣笠


うんのじゅうざ、とよむ。なんだか、本を集めている人の間ではしられているようだけれども、戦前戦後すぐくらいに冒険小説や探偵小説を書いていた。新青年系と、私の中では勝手に認知されているけれども、実際は違うのかもしれない。で、その人の昭和17年ごろの海軍に記者として従軍した従軍記事。乗っているのは巡洋艦青葉。

山田風太郎の日記などを読んでいると昭和17年ごろというのは本土での食糧事情がそんなに悪いとは思われないのだけれども(その後に比べて)、すでに不平不満は募っているらしく、それをにおわせるような描写が出てくる。「前線で兵隊さんがこんなに頑張っているのだから、銃後を預かる僕たちもがんばろー」というような本。戦後書かれた暗い、不平不満に満ちた文章は割と読んだことがあるけれども、こういう、戦中に書かれた従軍記録というのを読むのは実は初めてかもしれない。戦争中にどうゆう物を推奨して読まされていたか、というような雰囲気が伺われる。しかし、そういうふうに書かれているものであっても、戦艦の設計がそこに居住するものに配慮されていなかったり、精神論があまりにも跋扈しすぎているというのはとってもよく理解できる。そういう意味で、興味深い。