奥泉光『ノヴァーリスの引用 *1 』ISBN:4087475816

ノヴァーリスの引用


はずかしながらノヴァーリスとかに、青春の一時期傾倒したりしていないのだった。物理的に薄いけれども中身も割と薄い。著者の自作解説 *1 には「物語が語られるのではなくて、語ることそのものが、物語を創生していく機微を描いたもの」とあり、その通りに酒場での4人の男のはなす内容に従って、ミステリーからホラーへ物語はさまざまなジャンルを推移する。がしかし。

語られてる内容そのものがさして取り立てないものならば、まさに形式で勝負するしかなくて、形式で勝負しているにしては今一つ、短いこともあってインパクトが足りない。おなじ系統でゆうならば『葦と百合』 ISBN:408747044X の方がインパクトはあるし、ジャンル間の推移という点だけならば、そちらの方が成功している。それに、語ることそのものが云々の、「機微」が描けているとは思えない。もっとその、「機微」の部分をアピールしてもよいのではなかろーか。

というわけで、なんとなしに拍子抜け。『バナールな現象』ISBN:408747447X の方がよっぽど面白い。