京極夏彦『陰摩羅鬼の瑕』 ISBN:4061822934

どうも作中人物がほとんど実在の人物をもしたものであるらしいのだけれども、主要な登場人物の内の一人が現実世界でお亡くなりになってしまったらしく、生とは、死とは、をめぐる比較的ナイーブなお話に終始しているのはそのせいなのかもしれないし、刊行がずいぶん遅かったのもそのせいだったのかもしれない。

一連の京極堂シリーズの中では処女作のうぶめと対になるように書かれてる話だというのは、まあ、そうなのだろうけれども、それにしてはインパクトたりなーいと言ってる人をよく見かける。曰く、あの憑きものをおとされた感じがない。ミステリとゆーものはなんか、おっきい事件がどっかーんと起こって、そんな、予想もしなかった、というようなすっきりとした解決方法を探偵が提示してくれるものを望む人が多いらしい。

が、しかし。「探偵は、事件が起きるまで探偵ではない」というそれだけで私は許せてしまうのだった。何かミステリを内側から破壊するような工作がすすめられているような気がして仕方がないのは、まー、きのせいなんだろうなー。というわけで、
犯人ははじめからわかっていて
事件は起こらずに
探偵は探偵であるが故に事件を未然に防ぐことはせず
しかしながら惨劇は起こってしまう。
なんかそんなお話。