矢作俊彦 『ららら科學の子』 ISBN:4163222006

学生紛争を、決して懐かしさをこめて語らず、かといっておちゃらけてみせるわけでもなく、重さも軽さもかねそなえた過去として描きつつ、現在を抑制のきいたまなざしで遠くから眺めてみせる。『あ・じゃ・ぱん』のように、けむにまきつつわらかすのでなく、『気分はもう戦争2』のように、ある種の下品さを漂わせつつ現代を描くのでもない。作品を、まじめにかいてもかけるじゃないか。

なんかもー耳にたこができらぁってくらい聞かされた「長嶋にバントをさせた川上の話」もきちんとでてきていて、しかもしかもきれいに(ようやく)決着がついてる。 『スズキさんの休息と遍歴』を超えた。と、いえるところが重要なのだろー。まちがえなく今年度ベスト。って今年度の本全然読んでないけども。

私はあまり矢作俊彦の作品を読んでいないので気が付かなかったけれども、これまでの作品の登場人物が至る所に顔を出していて、ファンにとってはそういう意味でも楽しめる一冊になっているようだ。さておき、四方田犬彦が『ハイスクール1969』で、おそらく 1960 年代に対する決着つけているのと対をなしているように見えてしまうのは、気のせいではないと思うのだ。

追記:女子高生云々のくだりは的外れなので削除。おじさんの描く女子高生としてはこんなものだろー、くらいのつもりで書いたのだけれども、どうもそうはよめない。